ADR(裁判外紛争解決手続)とは?
近年トラブルも多様化する中で裁判によらないADRによる解決が注目を集めています。今回はADRの概要についてまとめています。
自身がトラブルに巻き込まれたときに有効な選択肢になりますので、是非ADRがどのようなものか皆さんに知っていただければと思います。
目次
ADRとは
日々の生活の中で起きるトラブルは様々な種類のものがあるのでその中には、裁判で拘束力のある決着をしっかりつけるべきものもあれば、お互いの話し合いによって解決するのがよいものもあります。また、トラブルは解決したいが、裁判をして法廷で皆に公開する のは嫌な状況もあると思います。
そんなときに役立つのが「ADR」で、「Alternative」(代替的)「Dispute」(紛争)「Resolution」(解決)の頭文字をとったものです。日本語に訳すと、裁判外紛争解決手続となります。これは、裁判をせずに、調停人などに間に入ってもらいトラブルを解決する手続きを意味します。
裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律
ADRについては「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律」で次のように目的等が定められています。
裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律
1条
この法律は、内外の社会経済情勢の変化に伴い、裁判外紛争解決手続(訴訟手続によらずに民事上の紛争の解決をしようとする紛争の当事者のため、公正な第三者が関与して、その解決を図る手続をいう。以下同じ。)が、第三者の専門的な知見を反映して紛争の実情に即した迅速な解決を図る手続として重要なものとなっていることにかんがみ、裁判外紛争解決手続についての基本理念及び国等の責務を定めるとともに、民間紛争解決手続の業務に関し、認証の制度を設け、併せて時効の中断等に係る特例を定めてその利便の向上を図ること等により、紛争の当事者がその解決を図るのにふさわしい手続を選択することを容易にし、もって国民の権利利益の適切な実現に資することを目的とする。
3条
裁判外紛争解決手続は、法による紛争の解決のための手続として、紛争の当事者の自主的な紛争解決の努力を尊重しつつ、公正かつ適正に実施され、かつ、専門的な知見を反映して紛争の実情に即した迅速な解決を図るものでなければならない。
2 裁判外紛争解決手続を行う者は、前項の基本理念にのっとり、相互に連携を図りながら協力するように努めなければならない。
ADRの基本的な流れ
申立書の提出
まず、申立書、証拠書類の写しなど必要な書類を提出して、あっせん手続を申し立てます。 申立が受理されると、トラブルの内容等を考慮してあっせん人が選任されます。
相手方への通知
次に、トラブルの相手方に、あっせんの申立があったことを通知し、相手方からあっせん手続に応じるかどうかについて回答が来ます。
*相手方があっせんに応じない場合は、ここで終了となります。
調停期日に事情聴取
相手方が調停に応じる場合は、それぞれの当事者から事情聴取をした上で解決策について話し合います。
和解成立
調停期日を数回経た後、合意が成立した場合は、書面を作成します。このときにかかる成立手数料の負担割合は、当事者の話し合い又は、調停人が決定します。
合意するかどうか自体も調停人が決定するのではなく、当事者が決めることになります。
ADRのメリット、デメリット
メリット
- 迅速かつ柔軟な日程調整をして、話合いを早く進めやすい
- 裁判よりも、解決のための条件を柔軟に決めることができる
- 法律の規定だけでなく、現実のトラブルに合わせた柔軟な解決ができる
- 特殊なトラブルでは、専門知識のない裁判官による裁判手続より、専門家や業界関係者によるADRの方がスムーズな場合がある
当事者が自主的に紛争解決を図ることができるので、良好な関係で解決できる場合がある - 非公開で行われる分裁判よりも手軽で、費用を抑えることができる
デメリット
- 相手方に出席を強制できない
- 合意しても和解契約書のみでは、合意が破られてもすぐに強制執行ができない
とはいえ、和解が成立した場合や事前に、仲裁手続に移行すると、ADRでの和解の合意内容を基にして、 ADR機関による仲裁決定を得て、確定判決と同一の効力をもつ債務名義によって強制執行が可能です。(仲裁法第13条第2項第5項、第38条第1項)。
ADRの窓口
かいけつサポート
法務省では、このようなADRを行っている民間事業者の申請があった際に、法律に定められた厳格な基準を満たしているかどうかを審査し、法務大臣の認証を取得した事業者はかいけつサポートの事業者として法務省からのお墨付きがもらえます。主な基準は以下の4つです。
- トラブルの内容に応じた専門家を紛争解決の手続を進める人(調停人)として選任できるよう、専門的人材を確保しているか
- 当事者のプライバシーや営業秘密などを守るための体制は整っているか
- 当事者と利害関係のある人が調停人とならないような仕組みが備わっているか。
- 手続を利用する前に、手続の内容や費用など、法務省が定めた事項を説明することとしているか
ADRを利用するときに参考にしてみてください。
行政書士ADRセンター
行政書士会でもADRセンターを開設しており、地域によって差異はありますが、主な取扱分野は以下の4つです。
- 外国人の職場環境・教育環境に関するトラブル
- 自転車事故に関するトラブル
- ペットに関するトラブル
- 賃貸住宅の敷金返還・原状回復に関するトラブル
より具体的な料金や流れについては、下記の行政書士ADRセンター東京のサイトも参考にしてみて下さい。