被害者が死亡した場合の告訴

被害者が死亡してしまった場合でも、周囲の人が犯人に刑事責任を取らせるために告訴したいと考えることがあります。

今回は、このように被害者が死亡してしまった場合の告訴についてです。

被害者が告訴しないまま死亡した場合

告訴権は基本的に、被害者など特定人に専属しており、相続や譲渡を許さない一身専属的な権限であると解釈されています。そのため、相続人が被害者に代わって告訴権を行使することはできません。

しかしながら、もしも被害者が告訴しないまま死亡した場合に、告訴が出来なくなってしまうと、特に親告罪では犯人が処罰されることができなくなってしまうなど、不合理になってしまいます。そのため、被害者が死亡してしまった場合には、配偶者や親族・兄弟姉妹のように被害者の代わりに意思表示することができると考えられる人に、告訴権が付与されており、被害者に代わって告訴を行うことができます。

これは、あくまでも被害者の代わりに意思表示を行うための制度ですので、例えば、被害者が生前に告訴しない意思を明示していたような場合などには、生前の被害者の意思に反して告訴をすることはできません。

告訴したいという意思を特に明示していない場合でも、告訴しない意思を明示しているような場合でなければ、配偶者や親族・兄弟姉妹などが告訴をすることが可能になります。

刑事訴訟法231条2項

被害者が死亡したときは、その配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹は、告訴をすることができる。但し、被害者の明示した意思に反することはできない。

被害者が告訴後に死亡した場合

被害者が告訴をした後に死亡したとしても、それによって告訴の効果に影響はありません。

しかし、被害者が生前に告訴をしている場合には、配偶者や親族・兄弟姉妹であっても代わりに告訴をしたり、告訴の取り下げを行うことができませんので、告訴を取り消すことができなくなります。

そのため、被害者がすでに告訴している場合には、配偶者や親族・兄弟姉妹などの遺族であっても捜査機関に委ねる他はありません。

まとめ

  1. 相続人が告訴をすることは出来ない
  2. 生前の意思に反しなければ、配偶者や親族・兄弟姉妹が告訴できる
  3. 被害者が死亡しても既にした告訴の効力に影響はない

 

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